コラム『所長の眼鏡』

タンス預金2005.08.01

 

“税務調査” “税務署”・・・嫌な響きです。法人税や所得税の調査を何度か経験された方は多いと思いますが、好きな方はいないと思います。

先日、「相続税」の調査の立会に行ってきました。数日前に、税務署から電話があり、「Aさんの相続税の調査にお伺いしたいのですが、」ということでした。私は2年前のファイルを引っ張り出し申告内容を
思い起こしました。すぐに当時のことは思い出しましたが、頭の中で「何で調査??」という、先月に引き続き嫌な予感がしたのです。(-_-;) というのも、相続税の申告というのは財産(遺産)と人間関係(相
続人)が絡み合うので、かなりの時間と神経を使うのですが、このAさんのケースは非常にスムーズでした。(念の為に、このAさんは相続税の申告に飛び込みで来られた方で、日頃はお付き合いがありませ
ん。)2年ぶりに連絡をし、調査の件を伝えますと快く承諾してくれました。

調査の当日、税務署の方が2人来られました。相続税の調査というのは国としても最後の砦ですからかなり真剣です。被相続人が亡くなる数年前からの預金の動きはもちろん、配偶者や子供、孫の名義の預金まですべて調べてから来ます。逆にいうと、調査に来るということはある程度調べがついていると
いうことです。でも、いきなり核心は突いてきません。「奥さんは結婚してから働いてたんですか?」「給料はいくらぐらい貰ってたんですか?」「ご主人の趣味は何でした?」等々・・・。普通はこの質問の意味が分からずに答えてしまいます。税務署の方って意外と話しやすいなぁと感じてくるほどです。しかし、実は 外堀から徐々に埋められているのです。そして、1時間ほどして、ついに本題です

02

「奥さん、ちょっと金庫の中を見せてもらえますか?」

つい先ほどまで、上品に応対していた奥さんの顔色が一気に変わり、「そんなん聞いてないで!!」と突然抵抗されました。(笑えませんが、まるで吉本新喜劇です。)
税務署の方も驚いていましたが、逆に自信を深めています。観念した奥さんが金庫を開けると、後ろから懐中電灯で金庫の中を照らし、すべて出すように指示します。すると、○○銀行、××銀行、△△銀行といろいろな銀行の袋が出てきました。嫌な予感的中です・・・(-_-;)

なんと!現金の束が数千万円出てきました。
万事休すと思ったのですが、奥さんはこの期に及んでまだトボケようとしています。しかし税務署の方は今までとは態度を一変させ、急に口調も荒っぽくなり、現金をズラリと並べて写真を撮りながら、すでに調べ上げているウン億円の預金、孫たちへの贈与について問いただしました。私も目を疑いましたが、孫たちへ自由自在に預金を振り替えていたのです。

マンガみたいな話ですが、これは事実です。2年前、Aさんは「確定申告は費用がもったいないので自分でします。」ということでした。まだ調査の決着はついていないので、これからAさんの被害を最小限にするために全力を尽くしますが、相当な“授業料”を払うことになりそうです。