コラム『所長の眼鏡』
競合他社とは何ですか?2015.04.01
すっかり春めいてきました。春は出会いと別れの季節ですが、新入社員が入ってきたり、人事異動があったりで、職場も気分新たにといったところでしょうか。 さて、経営をしていると売上や利益はもちろん、自社商品、顧客満足や社員教育にどうしても目が行きがちですが、競合他社について考えたことはありますか? 先日、保険会社の営業職員向けにセミナーをさせていただいたのですが、ほとんどの営業職員は他の保険会社がライバルという感覚しか持っていませんでした。 もし、保険に入るという前提であれば保険会社がライバルになりますが、例えば、節税対策であれば、車や機械を買ったり、修繕をしたりすることもあります。それらを扱う業者はすべて競合他社になります。 相続対策であれば、銀行、証券会社、ハウスメーカー、不動産業者等もすべて競合他社になるのです。 最近、度重なる不祥事もあり、業績が悪化している日本マクドナルドですが、日本のマクドナルドの競合は、ハンバーガーショップだけではありません。 むしろハンバーガーショップとの戦いには勝利していますが、コンビニ、うどん、牛丼など、その他の業態の競合が日本にはたくさん存在し、そこに勝たなければならないのです。 アメリカ人は毎日ハンバーガーを食べても平気かもしれませんが、日本人はそうではありません。米国本社の副社長をトップにして立て直しを図るようですが、問題の本質に気づかずに、これまでの「拠点戦略」だけでは厳しいでしょう。 そういう意味では、外食産業がもっとも激戦かもしれません。一方、日本コカ・コーラは、米国本社とは全く違う日本独自の状況に合わせた戦略を展開してきました。 伊藤園に対抗して「お茶」、UCCに対抗して「コーヒー」、ポカリスエットに対抗して「アクエリアス」を展開してきました。 お見事というほかなく、日頃コカ・コーラを飲まない大人たちも、いずれかの商品を口にしているはずです。

逆に言うと、伊藤園やUCCやポカリスエットからすれば、日本コカ・コーラが突然競合になったわけで、競合はいつどこから現れるか分かりません。 自動販売機ができてタバコ屋が姿を消し、さらにコンビニができてタバコの自動販売機も減りました。自動販売機ができて喫茶店が減り、さらにスターバックスなどの外資が来たり、今ではコンビニで淹れたてのコーヒーが飲めます。 アスクルができて文房具屋は大打撃を受けましたし、デジカメができて写真の現像は激減しました。 例を挙げるときりがありません。
産業の突然死が昨今叫ばれていますが、時代の変化を注視していないと、意外なところからライバルが現れ、市場を根こそぎ持っていかれるということにもなりかねません。 IT化によって様々な業務が機械化されて仕事がなくなった、外資が来て市場を荒らされたなんてことはざらです。 小売、建設、製造、運輸、金融、サービス、あらゆる業種にその波はやってきます。振り返れば歴史的な進歩としてとらえられますが、その間、多くの会社や労働者が戦いに敗れて姿を消していることになります。
今現在の競合他社も把握できないで、10年後、20年後の競合を予測できるはずもありません。 気分も新たな新年度に、会社を取り巻く環境と、市場の動向を整理し、未来に向けての判断を間違えないようにしたいものです。