コラム『所長の眼鏡』

巷で話題のビジネスモデル2016.03.01

 ブラジルの学生とアメリカのお年寄りの間で、ちょっとした面白いコミュニケーションが流行っています。 傍から見れば、インターネットを通じて会話をしているだけで、何の変哲もないコミュニケーションに思えますが、注目すべき点は、このコミュニケーションを手掛けたのが、ブラジル・サンパウロの語学学校だということです。
ブラジルの学生は「生きた英語を話したい。だけど、その機会がない」と嘆き、一方でアメリカのシカゴにある老人ホームに住むお年寄りたちは「時間を持て余して退屈だ。話し相手が欲しい」と切望していました。 この両者の悩みに目をつけた語学学校は、ブラジルの広告代理店に提携を依頼して、インターネットを通じて学生とお年寄りがビデオ・チャットできるシステムを完成させたのです。
その結果、学生にとっては、英語の勉強を通じて人生経験が豊富なお年寄りからアドバイスをもらえるというメリットが生まれ、お年寄りにとっては、孫ほどの年が離れている若者と話すことができ、とても楽しくかけがえのない時間になっています。 会話が終了したら、語学学校の講師が映像をチェックして学生たちの評価をしているそうで、この取り組みのおかげで人気も上々のようです。 まさに「Win-Win」の関係です。
泊まれる本屋 最近、東京の池袋に「泊まれる本屋さん」というコンセプトの宿泊施設ができたのをご存知ですか? 約1700冊の本に囲まれ、ベッドに横たわりながら好きな本がたっぷり読めるのです。 漫画・小説・学術本など種類も豊富で、外国人観光客も想定して、全体の4分の1が洋書だそうです。 「読書しながら寝落ちする幸せな体験を味わってほしい」という施設のメッセージで、オープン以来連日賑わっているそうです。
数年前に、終電を逃した若者が、マンガ喫茶(ネットカフェ)で始発を待ったり、家出少女がマンガ喫茶を転々としているという話を聞いたとき、「えらい文化ができたもんだ」と衝撃を受けましたが、今度は最初から宿泊施設なので、ビジネスホテルよりも安く、今日泊まる所を探している人をターゲットにしています。 名目は「ホテル」なので、マンガ喫茶のように時間制ではなく、料金は一律。 スペースは広く静かにベッドでゆっくり寝られる環境が整えられています。 そして、漫画だけではなく「書籍」もあるというのが意外とポイントが高いようです。
ビジネスにおいて、この施設のように「ありそうでなかったものに気づく」「お客様の潜在的欲求とニーズを満たす」ということはとても大切です。 それさえできれば、お客様は自動的に集まってきます。
しかし、私はこのビジネスモデルはあまり好きにはなれません。 ビジネスは文化を作ります。 冒頭の語学学校のように、お互いがWin-Winになるようなビジネスモデルは素晴らしい文化を生み出しますが、マンガ喫茶のように、家出の温床になるようなビジネスモデルは悪しき文化を生み出します。 家出をしたければ、友達の家に泊めてもらえばいいのです。 本を読みたければ、図書館に行って借りるか、本屋かネットで買って読めばいいのです。 そうすれば毎日寝落ちできます。 そもそも本なんて一晩でなかなか読めませんし、寝落ちしてしまったら思う壺、続きが読みたくなってまた行かないといけなくなりますね。笑