コラム『所長の眼鏡』
トランプはゲームをするつもりか?2017.02.01
子供の頃によくやったトランプゲームですが、カードを全員に均等に配り、親から順番にカードを出していきます。 カードを出す人は、直前に出されたカードよりも強いカードを出さなくてはなりません。 もし、2枚組で回ってきたら、自分もより強いカードを2枚組で出さなくてはなりません。 出せるカードがない場合や出せるけどまだ残しておきたい場合は、パスをします。 自分の手札がなくなったら「アガリ!」です。「大富豪」というトランプゲームですが、最後の一人になるまで繰り返し、一番にあがった人が「大富豪」になります。 二番目にあがった人が「富豪」、最後から二番目にあがった人が「貧民」、最後まで残っていた人が「大貧民」となります。それ以外の人は「平民」です。 このゲームの醍醐味は、2戦目以降、大富豪は大貧民に不要なカードを2枚渡し、大貧民は大富豪に手札の中で最強のカードを2枚渡さなければなりません。 同様に、富豪は貧民に不要なカードを1枚渡し、貧民は富豪に最強のカードを1枚渡します。 すなわち、2戦目以降は始まる前から大きなハンデが与えられるのです。 さらに、8切りやイレブンバック、しばり、スペードの3など特殊なルールが場を盛り上げます。

懐かしいと思われた方も多いと思いますが、このトランプゲームの「大富豪」が現実の世界に現れました。 大富豪のドナルド・トランプ氏です。 なんと彼は大富豪のゲームをするために、アメリカの大統領となって現れたのです。 現時点ではそんな印象を持っています。 就任演説を聞くと、彼の頭の中にある経済は、30年前にアメリカ人が日本人に対して抱いていた発想です。 第2次産業に限られた話で、時代錯誤も甚だしいと思います。 第2次産業とは、農林業、漁業、鉱業など第1次産業で生産した原材料を加工する産業です。 麦から小麦粉やパンを作ったり、木材から家を建てたり、魚からかまぼこを作ったり、鉄から自動車を作ったりすることです。 つまり、製造業や建設業で、米国における第2次産業は、米国企業によって淘汰されました。 その後、レーガン革命によって通信や金融などの分野が台頭し、大いに繁栄します。 現在、米国の80%は第3次産業に従事しており、第3次産業とは、小売業や運送業、飲食、医療、通信、金融など、形にならないものです。 第2次産業で敗北した人たちが、「雇用を取り戻す」というトランプ大統領のメッセージを受けて支持したのですが、現実的にはまず不可能でしょう。 米国は第3次産業の発展で強くなりすぎているのが現実で、トランプ大統領の認識は完全に間違っています。
また、「America First」というキーワードだけで、「世界」という言葉が出てきません。 選挙中は、もしかしたら?という期待もありましたが、やはり「好感を持てない」というのは致命的です。 「メキシコとの国境に塀を築いてメキシコに払わす」とか、中国や日本に対しても、とにかくケンカ腰です。 「関税をかける」「条約を破棄する」といった言動は、いかにもトランプゲームの特殊ルールのようで、バブルの頃の地上げ屋のようなやり方です。 しばらくは放っておくしかないのでしょうか…。
中国のことわざに「大国を治むるは小鮮を煮るがごとし」という言葉があります。 国を治めるのは小魚を煮るようなもので、やたらかき回してはならない、という意味です。 会社経営にも当てはまりますが、これから世界中かき回しそうですね。。。