コラム『所長の眼鏡』

正しい呼吸法2017.03.01

 生徒「こんなことやって将来何の役に立つんですかー?」
先生「こんなことも出来ない君は将来何の役に立つんですかー?」
なかなかセンスのある笑い話ですが、私も学生の頃は同じような疑問を持ちました。 ただ、こんな洒落たことを言う先生はいなくて、「いつか役に立つ時が来るから…」という理由にもならない理由で説明されるのがオチでした。 何のためにこの知識を学ぶのか、という説明がないのです。
これは、教育における「入」「出」のバランスが取れていないのです。 「入」とは頭の中に知識を充てんする局面。 「出」は逆に持っている知識を使う局面です。 会計には「入」と「出」があり、「入」の方が多いと利益になり、「出」の方が多いと赤字になります。 そして、このバランスは必ず合うようになっています。

ところが日本の教育では、小学校から大学まで、知識をどう使うかではなく、どう入れ込むかという教育ばかりで、バランスが取れていません。 その結果、「しゃべらない」「かかわらない」「キレる」という若者が急増しているように思います。
社会人になると、動く前にひたすら知識をため込む人がいます。 知識武装しないと動けないタイプです。 しかし、英語の知識をいくら頭に詰め込んでも、使う機会がなければ一向に英会話が上達しないように、いざというときに実力を発揮できません。 また、動くためには経験が必要だと考える人もいます。 経験を積むまでもう少し時間が欲しいと言って、結局、動こうとしない。 すべて入と出のバランスが取れていません。 こういう人たちは、最後に「キレる」「辞める」という行動でバランスを取るのです。 先日「出家する」という人もいましたが…(^^;)

人はインプットの次にアウトプットがあると考えがちですが、むしろ重要なのはアウトプットの方です。 思い切りアウトプットするから、インプットの必要性を痛感するのです。 そもそも人間にはその能力が備わっています。
それは「呼吸」です。
意識する人は少ないですが、正しい呼吸法は、吸って吐くのではなく、吐いて吸うのです。 息をとことん吐き切った後は、自然に息が吸い込まれます。しかも最小限の努力で。 この吐く息のことを「呼気」といいます。 すなわち「呼ぶ気」ですね。 人を呼ぶときは、息を吐かないと呼べないのです。 だから人が息を吐くのを「呼気」と名付け、息を吐くことによって吸うことも呼ぶ。 呼吸という字が「呼」が先で「吸」が後になっているのには、意味があるのです。


スキューバーダイビングの初心者は、水中で怖いから吸うことばかり考えるそうです。 吸って、吸って、吸って、「くっ、くるしい…」となるわけです。 会話でも、しゃべりっぱなしの人もいれば、黙ってばかりの人もいます。これは相手が疲れます。 商売でも、商品をいくら仕入れても売れなければ在庫です。製品をいくら作っても売れなければ在庫です。 それが嫌なので仕事が来るのを待っている。 これらはすべて、営業とのバランスが取れていないのです。当たり前のことですよね。
ちなみに、誰でも口からマイナスなこともプラスなことも吐きます。 だから「吐く」という字は「口」と「+」と「-」でできています。 そして、マイナスのことを言わなくなると、「-」が消えて「叶う」という字になるのです。 日本語って、おもしろいですね(^^)