コラム『所長の眼鏡』
ミニバブルのゴルフ会員権2006.11.01
「ついにこの時がやってきた!」市場関係者は興奮気味だそうです。
各地のゴルフ会員権が昨年後半から急騰し、年が明けても活況が続いています。会員権相場をまとめている『首都圏ゴルフ場四季報』は、最新版の表紙に、「ミニバブル現象起こる!」と大きな見出しを打っています。
このなんともいえないビミョーな表現には、不安感さえ漂いますが、「市場は昨年10月から様相を一変。
勢いは年を越すとますます激しくなり、市場から売り物が消えた」と解説しています。年明け以降はさらに加速し、会員権相場は半年で30.8%上昇しています。
しかし、「心が痛む…」と創業36年の会員権売買最大手の「桜ゴルフ」の佐川八重子社長は、「ここに至るまでの冬の時代は長く、ゴルフ場の過剰開発、会員権の暴落、相次ぐ倒産などを思い起こせば…」と、決して手放しでは喜べないのがホンネでしょう。
ゴルフ会員権相場がプラス成長したのは16年ぶり。その過熱ぶりはやはり、バブル期を彷彿させますが、それでも、株価がピーク時の5分の2まで回復したのに対して、ゴルフ会員権はまだ10分の1以下です。にもかかわらず、先程の佐川社長は、「それだけ良い物を見抜けば、今が買い時といえる」と、まだ懲りない様子。
仕事柄仕方がないのでしょうが、それを見抜けないからみんな失敗したのに…(-_-;)
実際、ゴルフ会員権相場は活況を呈する一方で、経営破綻は今も続いています。帝国データバンクによると、昨年のゴルフ場の倒産件数は65件で、負債総額は1兆1477億円に達しました。
すなわち、毎週日本のどこかのゴルフ場が倒産していたわけです。倒産のピークだった02年は、108件で負債総額2兆1897億円ですから、3日に1件倒産していたのです。この3年でその件数もほぼ半数になり、破綻の嵐はやっと沈静化してきたようですが、会員権などとてもじゃないけど買う気にはなれません。
そもそも、ゴルフ会員権とは何か。会員制度には「社団法人会員制」「株主会員制」「預託金会員制」の3種類があります。
このうち最も数が多いのが預託金制で、これが相次ぐゴルフ場倒産と会員権価格の暴落に結びついたのです。
預託金制の場合、一定の金額をクラブに預けて会員となり、ゴルフ場の施設を利用する権利を手に入れます。
預託金はゴルフ場開発の資金に回されますが、会員が一定期間が過ぎて退会する場合には返還請求できる約束になっていました。昔は、会員権が値下がりするなんて想像もできず、購入価格よりいつも高値で売買されていたため、預託金返還を請求されるなどゴルフ場も考えていなかったのでしょう。
そもそも預託金制度というものが間違っており、「10年後には返します」などと、守れもしない約束をして、多くのゴルファーを悲劇に陥れたのです。
バブルが崩壊し、すっかり会員権の価格も下がってから、私は所長からあるゴルフ場の会員権を譲ってもらいました。
その時の名義変更の面接で、ゴルフ場の支配人がとても横柄だった事が今でも忘れられません。