コラム『所長の眼鏡』

緊急事態には道具を捨てろ!

 


ようやくワクチン接種が日本でも始まりました。

医療従事者、高齢者、基礎疾患のある人、一般の順で、年をまたぐ可能性もあると言われています。

新規感染者数も減少し、首都圏以外は緊急事態宣言も解除の方向ですが、日常を取り戻すのはまだもう少し時間がかかりそうです。

結局、薬ができないとマスクは外せないということですかね。


さて、先月、中国最大企業のアリババの創業者であるジャック・マー氏が中国の「英雄」から「厄介者」になってしまった、というニュースを見ました。


マー氏は昨年、上海の会合で「中国の金融は未熟」「銀行の考え方は古い」「イノベーションが必要」だと説いた上で、「中国の銀行の経営は昔の質屋の営業と変わらない」「昨日の方法では未来は管理できない」と率直に意見しました。

その結果、アリババ傘下の電子決済サービス「アリペイ」を運営するアント・グループの上場が一時延期され、アリババも公正取引委員会の監査を受け、マー氏もこの3ヶ月間表舞台から姿を消したままです。



電子決済(キャッシュレス)が進み、中央銀行発行の人民元(紙幣)の流通が少なくなると、中央銀行の役割が低下します。

また、中国ではデジタル人民元の発行を計画しているが、アリペイ等の電子決済が主流になると、デジタル人民元の流通(役割)が阻害されることは大問題で、国の中央銀行だけでなく、市中の銀行の存在意義も問われる、というわけです。


中央銀行を拠点とした銀行システム、すなわち金融システムは、昔から為政者が管理するもので、権力者にとってこの権利が奪われることは大問題なのです。


確かにキャッシュレスの時代の進展により、新しい金融システムの構築と管理は必要で、そのシステムはイノベーションされるべきであることは事実だが、このシステムは民間にコントロールされるのではなく、権力者(中国共産党)がコントロールするシステムでなければならないと考えた時、マー氏の存在は「英雄」から「厄介者」になります。


なぜなら、中国共産党はデジタル人民元を通じて、アメリカドルを中心とした世界の金融システムを支配するアメリカを打倒し、世界の金融システムを支配することにより、革新技術(6G、ロボット宇宙、自動運転、量子コンピュータ等々)と一帯一路の外交政策(陸のシルクロードと海のシルクロード等)を駆使し、世界の覇権を握る野望が達成出来るからです。


一方で、安倍前首相が、在任中に一度だけ靖国神社を参拝したことを覚えていますか?

2013年12月26日、再登板となる首相就任から1年にあたる節目の日のことです。


その少し前、「参拝を思いとどまる」ように強く説得を試みたアメリカ人がいました。

ところが、安倍氏が結果的にこれを拒否したことに対し、「米政府は激怒した」と当時の米主要メディアは報じています。

参拝の直後、米国務省は「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」という“異例”の声明を公表しました。

「失望(disappointed)」という、日本政府内からも反発が出るほど強い表現を入れさせたのは、先程の「安倍首相説得」を試みた人物だとされています。


さらに、この人物はこうも言っています。

「核保有国になり得ないとする日本の憲法を我々が書いたことを知らないのか」「学校で学ばなかったのか」

これは2016年8月、当時大統領候補だったドナルド・トランプ氏が日本の核武装を容認することを示唆したことに対する批判として、ヒラリー・クリントン氏の応援演説の中で飛び出したものです。


これらの発言をしたアメリカ人とは、ジョー・バイデン大統領です。


2つ目の発言は、もちろん事実として正しくないのですが、それでも、現米大統領が日本をどう見ているかについては大きなヒントになりそうです。


このように、コロナ禍であっても世界は動いています。

今後、日本が米中の覇権争いに巻き込まれることは目に見えていますが、日本経済にどのような影響を及ぼすのか非常に気になります。


1949年。

アメリカの渓谷で山火事が起こりました。

火事を食い止めるために消防隊員たちがパラシュートで現場に入ったのですが、風向きが変わり、当初予定していたよりも火の手が早く燃え広がり、安全だった場所にいた消防士たちを炎がすごいスピードで追いかけだしたのです。


その時、消防隊長は隊員に向かって「道具を捨てろ!!」と叫びました。

2人はすぐにその言葉に従い、走って丘を超えることで身の安全を確保しますが、他の隊員たちは、道具を持ったまま走って炎に捕まってしまいました。

疲れ切って走るのを止め、座り込んでしまった隊員もいました。

背中に重いバックパックを背負ったままだったのです。

結局、この山火事で道具を捨てなかった13人の消防士が大切な命を落とすことになってしまいました。



なぜ道具を捨てなかったのか?


想定外のことが起こった時、経験豊かな人ほど変化に適応しようとせず、自分が最もよく知っているものに執着してしまうそうです。

この人間の傾向が、消防士に誤った意思決定をさせてしまったのです。

自分たちがこれまで経験したことがない状況で、たとえその慣れへの執着が自分の命を捨てることになるのが明白な状況だったとしても、慣れ親しんだ道具を捨てることが怖いと思ってしまったのでしょう。


状況が変わっているのに、いつものやり方を繰り返してもダメで、「反復練習で培ってきた知識やスキルは緊急事態に役立たないことが多い。なぜなら、状況が変わっているのに、いつも通りのやり方しかできないから」だそうです。


私はこれを聞いたとき、自分もこのままいったらヤバイなと思ってしまいました笑。

なぜなら、勉強でもスポーツでも、コツコツと同じことを反復して知識やスキルを積み上げることが重要だと教わってきたからです。

根気だけは誰にも負けない!という人も多いのではないでしょうか。苦笑


でも、その根気強さは、時として命取りになってしまうということです。

緊急事態の状況では、自分が積み上げてきたことを捨てる勇気が必要で、コロナ禍の今こそ、せっかく積み上げてきたものの、緊急事態には足手まといになるものを捨てて、新しい道具を手に入れなければなりませんね。