コラム『所長の眼鏡』

カナリアの合図2014.11.01

 

すっかり肌寒くなり、今年もあと2か月となりました。

虎キチの私にとっては、この時期にまだテレビで野球が観れるというのは、何よりの幸せです(^^;)

テレビといえば、読売テレビで毎週日曜日11:25放送のBEAT~時代の鼓動~」という番組に、縁あって当事務所が紹介されることになりました。

先日撮影に来られたのですが、放送が11月2日ですので、このコラムを読まれているときはすでに放送後かもしれません。放送後は当事務所のHPで公開しますので、ご覧いただけたらと思います。


さて、先日『死の淵を見た男~吉田昌郎と福島第一原発の500日~』(門田隆将著、PHP研究所)という本を読みました。

東電は「悪」というイメージだけが残っていましたが、震災当日から現在に至るまで、東電の現場の人たちの命がけの行動には言葉もありません。

この本は、震災の瞬間から現場で何が起こっていたのかという事実だけが、吉田昌郎所長はじめ、東電や協力企業、菅直人元首相、自衛隊、科学者、地元の人々などの証言をもとに書かれています。

正直、何も知らなかった。知らないことが多すぎる…というのが率直な感想です。

私も数多くの本を読んできましたが、お薦めというより、日本人であれば読んでおかなければならない本です。

カナリア


経営者はトラブルに見舞われたとき、迅速な対応を求められます。そして、社員がどれだけの対応ができるかという教育も必要になってきます。


阪急の創始者の小林一三は、読めないリスクを徹底的に排除しようとしました。

創業当初の阪急梅田駅はホームが2階で板張り、横には郵便局があり、こちらもまた木造だった。

ある時、消火訓練の際に「今もしここで火事が起こったらどうするか?」と質問したことがあった。

常識的な答えが返ってきたが、彼はこれで満足しない。様々なケースを想定し、矢継ぎ早に質問を浴びせ、答えが返ってこなくなると、自分でアイデアを出していくのです。

だが、ちょうどこの時、ホームに貨物列車が入ってきて、これに積み込む荷物がそこかしこに転がっている。

「荷上げがすみましたらすぐやらせます」と責任者が応えると、

「火事が待ってくれるか!」と一喝したそうです。

その後、隣の郵便局が火事で全焼するという事件が起きたが、阪急梅田駅は類焼をまぬがれ、やじ馬たちは「ほんまに阪急はんは運が強いな!」と口々に言ったそうです。


経営においてリスクはつきものです。地震や火事のような天災だけでなく、さまざまなリスクと向き合わねばなりません。


かつて炭坑夫たちは、炭坑に入るとき、必ずカナリアを連れて行きました。

毒物に敏感で、坑内に有毒ガスが漏れ出したとき、人間より早くカナリアはその危険を察知するのです。カナリアは常にさえずっているので、異常発生に先駆けまずは鳴き声が止むそうです。

人間はその時点で引き返せば命が助かるのです。


この借入れをして大丈夫か、この設備投資をして大丈夫か、この業者と取引して大丈夫か、そもそもこの事業の先行きはどうか…、経営にもカナリアが必要です。

その一つが毎月の試算表です。

カナリアの合図を無視していませんよね。まさか、自分の勘だけに頼っていませんよね。