コラム『所長の眼鏡』

安倍元首相2008.10.01

 

突然ですが、先日、安倍元首相とお会いしました。というのも、私が所属するある会にお越し頂けることになり、約1時間の講演とその後の懇親会にまで参加してくださったのです。

冒頭で突然の辞任に対するお詫びがあったのですが、病気を理由に辞任したことは皆さんもご存知のことだと思います。その病名は「潰瘍性大腸炎」というもので、マスコミではあまり報道されませんでしたが、この病気は腸全体がただれ、食べても栄養にならないということで、難病指定されているそうです。

そんな安倍元首相ですが、今ではすっかり元気になっておられ、日本について熱く語ってくださいました。
特に戦後60年からの脱却について、「憲法前文には、…われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する…と書かれています。これは、世界のことは世界が決めてください、日本はそれを黙って支持しますよ。と書かれているんです。これを早く変えなければ、日本は世界から見放されてしまう。」と仰っていました。この話しは非常に迫力があり、私が抱いていた安倍元首相に対する印象とは全く違ったものでした。

そうかと思うと非常にユーモアもあり、私が一番印象に残ったのは、安倍元首相が小泉内閣で官房副長官だった頃の小泉元首相のお話でした。あの方はオペラ好きで有名ですが、郵政解散をしたとき、小泉元首相は官邸内でワーグナーを大音量で聴きながら、「首を狙われているから、俺も狙いに行く!戦国時代 なら殺されている!」と言って、全国に刺客を送り込んだそうです。

また、外交についても信念があり、「私は小泉さんの外交を日本の資産にしなければならないと思った」と、仰っていました。
「北朝鮮、中国、ロシアといった共産国は、外交で会うだけでありがたいと思わせる。逆に言えば、日本は会ってもらえるだけでありがたいと思ってしまうのが過去の外交で、相手は、会えるかもしれないと言っておいて、都合が悪くなるとすぐに会わないと言うんです。ところが小泉さんは、会わないどころか羽織袴を着て靖国神社に行くんです。6回もですよ!」と、これには皆、爆笑でした。

そんな小泉元首相も、ついに政界から引退することを発表されましたが、やはり気になるのは今後の経済です。小泉、安倍と続いた改革路線は、福田内閣で一気に後退しましたが、このことは実は経済にも大きく影響しています。というのも、所信表明で小泉元首相は「自民党をぶっ壊す」と言い、安倍元首相は「小泉改革を継承する」と言いましたが、外資はこの所信表明を受けて、今後の日本市場に対するレポートを世界へ配信します。その答えが、「日本は買い」だったのです。しかし、福田前首相は「改革」と言わなかったため、今度は外国の投資家は「日本は売り」というレポートを世界へ配信しました。実はこのレポートを書いたのがゴールドマンサックスの営業部長で、それが福田前首相の甥だったそうです。

安倍元首相は「君は国 賊か!?首相の甥がそんなレポート書くか!?」と本人に言ったそうですが、実際にその後株価は下がり始めました。外国の投資家はそういう眼で日本を見ているのです。そう考えると、解散総選挙のことしか言わない麻生新総裁もあまり期待はできないような気がします。。。