コラム『所長の眼鏡』
在庫は犯罪!?2010.06.01
もうご存知の方も多いと思いますが、「鳥の詩-決定版」という面白い詩をご紹介します。
日本には謎の鳥がいる。
正体はよく分からない。
中国から見れば「カモ」に見える。
米国から見れば「チキン」に見える。
欧州から見れば「アホウドリ」に見える。
日本の有権者には「サギ」だと思われている。
オザワから見れば「オウム」のような存在。
でも鳥自身は「ハト」だと言い張っている。
「カッコウ」だけは一人前に付けようとするが、
お「フクロウ」さんに、「タカ」っているらしい。
それでいて、約束したら「ウソ」に見え、
身体検査をしたら「カラス」のように真っ黒、
疑惑には口を「ツグミ」、釈明会見では「キュウカンチョウ」になるが、
実際は「ヌエ(鵺)」のようだ。
頭の中身は「シジュウガラ」、実際は単なる鵜飼いの「ウ」。
「キジ」にもなる「トキ」の人だが、
私はあの鳥は日本の「ガン」だと思う。
世界の金融市場はヨーロッパのPIIGS(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)と呼ばれる5カ国を代表に財政破綻している国が多く、ユーロもドルも危機感が広がり、円買いが続いています。
また北朝鮮有事でも円買いで、いかに円が強い通貨かが分かります。
そんな中、沖縄を行ったり来たりするハトで大丈夫かと心配ですが、なぜこれほど財政赤字で景気が悪く、政治が混迷を極める国の通貨が強いのでしょうか…!?
これは日本の借金の中身とキャッシュフローにあります。
日本の国債残高はずっと増え続けているものの、実は他国からの借金である「対外債務」はほとんどありません。
日本の国債はその大部分を国内の金融機関に販売しています。
一方で、日本は外貨準備高など財政余力に優れており、世界でも指折りの債権国で、尚且つ現在の環境下でも貿易黒字が続いています。
すなわちキャッシュフローが黒字なのです。
会社経営に置き換えれば、身内からの借入は膨大にあるが銀行からの借入はほとんどなく、キャッシュフローが黒字なのですぐに倒産することはないだろう…
ということで、一時避難場所として円が買われているのです。
では会社経営でキャッシュフローを良くするにはどうすればいいのでしょうか…!?
ポイントは2つです。
①回収と支払いのバランス、すなわち売掛債権の回収と、仕入債務の支払いのサイトバランスを良くする。
②棚卸資産の回転日数、すなわち商品を仕入れてから売上げに掛かるまでの日数を短くする。
このどちらかでも悪くなれば資金繰りは悪化します。
あの松下電器産業(現パナソニック)でも、1兆円あった金融資産が3000億円に減ってしまったことがあり、
その主な原因は「売上げの機会損失を避けるための過剰在庫」だったのです。
つまり、「在庫」は「財庫」ではなく「罪庫」なのです。
なぜ大企業でもこんな当たり前の状況に陥るかというと、株主から「増収増益」を求められるからです。
つまり、損益計算書の世界です。
中小企業も同じで、売上目標と利益目標は掲げても、在庫目標を掲げることはまずありません。
実地棚卸も決算期末だけです。
これでは税務署のために棚卸をしていることになります。
損益だけでなくキャッシュフローを考えて、「在庫は罪庫」と覚えておいて下さい。