コラム『所長の眼鏡』

同業者とクマ2011.11.01

 

欧州の金融危機が拡大し、円高も過去最高を記録しています。

日経新聞に書かれていましたが、

「その国々によって、どうしても徹底できない教育がある。中国人にはマナー教育、米国人には反戦教育、イタリア人には純愛教育、日本人には英語教育、そしてギリシャ人には金銭教育」

と、世界の金融業界で揶揄されています。

もちろん冗談なのでしょうが、ギリシャに端を発した金融問題は深刻です。

 

さらに日本では震災後、政治が何も決められない状況です。

国の売上げを決める税制改正でさえも宙ぶらりんの状態ですからお手上げです。

野田総理は28日の所信表明で、歳出削減に「断固たる決意」、円高是正に「あらゆる手段」と言っていましたが、もう国民にはすっかり見透かされています。

結局は増税路線で、国民に理解を求めると言われても反論できる場面がないのですから、結局は国民にツケが回ってくるのです。

 

さらにTPPの問題にしても、賛否両論はあるでしょうが、たとえ参加したとしても日本が世界で主導権を握ることはないでしょう。

外国からの圧力に対抗したエピソードは数多くありますが、その一つに、日本では独自の発展を遂げた将棋があります。

終戦直後にGHQから

「相手から奪った駒を使う将棋は、捕虜虐待の思想につながる野蛮なゲームだ」

と禁止されそうになったことがあったそうです。

その時、将棋連盟の代表として呼び出されたのは、豪傑の誉れ高い天才棋士・升田幸三氏。

升田氏は「将棋は人材を有効に活用する合理的なゲーム。取った駒を殺すチェスのほうがよっぽど野蛮じゃないか」

と一歩も引かず、さらに

「チェスはキングが危うくなるとクイーンを盾にしてまで逃げる。これは貴殿らの民主主義やレディーファーストの思想に反するだろう」

とやり込め、将棋禁止を撤回させたそうです。

どんな事柄でも、自分に有利に事を進めるのは難しいものです。

ただ、今の時代は相手との交渉を優位に進めるだけでなく、将棋のように先手先手を読むことが必要になってきます。

 

―ここに同業者とクマの話があります―(ご自分の業界に当てはめてください)

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森の中を2人の同業者が歩いていると、突然森の中からクマが現れた。

クマは両腕を大きく広げ、今にも襲い掛かろうとしていた。

それを見ると、一人は突然腰をかがめ、靴の紐をしっかりと結び始めた。

「なにやってんだ!?」

もう一人が怪訝そうに聞いた。

「いや、君より早く逃げればいいんだから・・・」

 

変化の波は、逃げ遅れた者を喰らうということを忘れてはならない。

何回読んでも恐ろしい話ですが、これはどの業界にも当てはまる話だと思います。

そして、どの業界にも見事にこの両者がいます。

通常、変化の波というのは目に見えないものですが、今は目に見えるぐらい明らかに変化することが予想できます。

悪いことばかりが重なり、好材料を見つけることが難しい時代ですが、津波のような変化の波に逃げ遅れることなく、変化をリードする側にならなければなりません。