コラム『所長の眼鏡』
未来を予測する感受性2012.01.01
2011年は激動の年でした。
東日本大震災があり、復興、原発、電力不足といった問題は全く解決されていません。
その他にも、日本の国債格付けはAA-に格下げ、GDPが中国を下回り、円相場は1ドル=76円25銭と16年ぶりに最高値を更新しました。
海外では中東の春があり、ビンラディン、カダフィ、金正日といった独裁者が次々とこの世を去りました。
では2012年はどうなるのでしょうか。
もっとも関心事は日本経済ですが、世界的に景気は悪くなる一方です。
2008年9月にリーマンショックがあり、2009年は「100年に1度の不況」といわれましたが、一向に抜け出す気配がありません。
多少の復興需要は期待できますが、アメリカ、ロシア、フランス、韓国では大統領選挙が予定されており、各国の代表が変わる可能性も考慮すると、さらに変化することは容易に予想がつきます。
北朝鮮の問題も大きく影響するかもしれません。
では、そこで我々に必要なことは何か…。
新しい時代が来ることに備えて準備をしておくことです。
以前、このコラムで、「風が吹けば桶屋が儲かる」という話をしましたが、様々な要素が複雑に絡み合った未来を予測しなければなりません。
はっきり言ってそれは不可能かもしれません。
ただ、唯一備える方法があるとすれば、それは歴史を学ぶことかもしれません。
「頼るべきものは人望ではなく、ただ己の力あるのみ」
とナポレオンは言いました。
『神童』といわれた幼年期、4年で卒業するところを11ヶ月で卒業し、24歳という異例の若さで少将へ抜擢されます。
その後、オーストリア遠征、イタリア遠征、エジプト遠征と連戦に連戦を重ね、ついには若干35歳にしてフランスの皇帝へと上りつめてしまいます。
人は、ナポレオンを「英雄」と呼びました。
しかし、たった1つの小さなつまづきが彼の人生を大きく変えたのです。
フランス皇帝から弧島での幽閉生活へ。
発端はロシア遠征の失敗です。
まさかそんなはずが…。
誰も信じられない事実。
天才ナポレオンの失敗として歴史に知られていますが、原因はたった1つ、冬のロシアの寒さを予測できなかったのです。
その約90年後に日本軍がロシア帝国を破るのですが、年末の『坂の上の雲』を見ていると、朝鮮半島を越えた奉天でさえあの寒さですから、ロシアの寒さは容易に想像がつくはずです。
しかし、それは歴史が証明しているに過ぎないのです。
2012年も激動の年になることが予想されますが、先日出会ったすばらしい詩をご紹介します。
ばさばさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
これは、詩人茨木のり子さんの「感受性くらい」という作品ですが、最後の「ばかものよ」が心に刺さります。
未来を予測することは、時に困難がつきまといます。
今こそ感受性を磨かねばなりませんね。