コラム『所長の眼鏡』

三猿主義からの脱却2012.07.01

 

見ざる、聞かざる 、言わざる

本当に日本の政治も狂気の沙汰の段階に入ってきました。

 

野田首相は

「行政改革もやります!経済対策もやります!しかしその前に増税します」

と言い、さらに

「政治生命を賭して『社会保障と税の一体改革』をやり遂げます。でも、社会保障はいったん棚上げにして消費税だけ先にします」

「その消費税も中身はあとで決めるとして、取り敢えず税率だけ8%、10%にします」

 

…って、そんな吉本新喜劇みたいな面白い話が、政治の世界で繰り広げられました。

ことここに及んで金が足りないから政府がもたない。

政府がもたないと国民に大きな迷惑がかかる。

 

ここまでは正しい。

しかし冷静に考えて今の政府が税率を引き上げて本当に財政赤字がなくなるのでしょうか。

ギリシャの増税騒動を見ても分かるとおり、不況のさなかに増税をすればかえって税収は減り、財政赤字はひどくなり、結果的に国民には増税プラス財政破綻の二重苦が襲います。

国会議員の数は全然減らないし、そもそも今の原価積み上げ方式で予算編成をやっている以上、歳出の総額が減ることはほとんど考えられません。

あれが必要、これが必要と言っている間にいくらでも予算総額は増えていきます。

 

今の時代、大企業、中小企業にかかわらず、事業計画を立てるのに総額を決めずに、原価積み上げ方式の予算編成をしている会社がどこにあるでしょうか。

今の日本政府のような悪質な多重債務者のごとき態度は、増税を許したらますます増長するでしょう。

まずシステムを変える。増税の論議はそれをやった後のことだと思います。

 

一方で、先月驚くべきニュースが入ってきました。

皆さんは、「未払い税金があると銀行は融資してくれない」とか、「2 期、3 期連続で赤字だと融資の対象になりにくい」という話を聞いたことがあると思います。

ところが、「SMBCとりそなHD、みずほFGの傘下銀行が、2013 年3 月期までに法人税の納付を再開する見通しとなった。りそなHD は18 年ぶり、SMBCは15 年ぶり、三菱東京UFJは2011 年3 月期に10 年ぶりに納税済み」との報道が流れました。

「エーッ!?」という感じですが、実は納税していなかったのです。

しかも再生を図るために公的資金が注入されていることは皆さんご存知だと思います。

にもかかわらず、借りたい企業には貸さず、投資信託やデリバティブといった金融商品ばかりを売り歩いているのです。

 

「見ざる、聞かざる、言わざる」という言葉があります。

日光東照宮の3 匹の猿があまりにも有名ですが、面倒くさいことに関しては、この「三猿主義」に隠れるのが、一番分別があるように思われます。

しかし、これは徳川が人民を制御した消極政策、というより去勢政策です。

これによって300 年の平和を維持しようと努めた一つの手段でした。

これが150 年後の今でも「おとなしい国民性」といわれるように、我々のDNAに綿々と引き継がれているのでしょう。

 

しかし、これは何も政治の関心に限ったことではありません。

会社でも同じで、「ホウ・レン・ソウ」と何度言っても聞かない社員はいませんか?

これは本当に深刻です。

こういう人は絶対に自ら行動しようとはしません。

謙虚ではなく、無関心なのです。そろそろ三猿主義から脱却し、我々中小企業はよほど知恵を絞らないと生き残れない時代です。