コラム『所長の眼鏡』
日本酒のできる過程2013.07.01
天下のソニーの創業者の井深大氏が、パートのおばちゃんにリーダーシップを教えてもらったという話があります。
それは、井深氏がソニーの社長時代に建てた一つの工場であった話です。世界の第一線の工場を見たいという人が後を絶ちません。
しかし、その工場には一つ問題がありました。
それは「トイレの落書き」です。
内容はエンジニアが閃いた数式などだったそうですが、外国の人にとっては落書きにしか見えず、良いイメージを与えていませんでした。井深氏は会社の恥だからと工場長にやめさせるよう指示をし、全スタッフに周知してきました。
でも、社長からの指示と言っても落書きはなくならなかったのです。
しかし、ある日を境に、落書きをするスタッフはいなくなりました。
一体、何があったのでしょうか…?
それは、トイレ掃除のパートのおばちゃんが、
「落書きをしないでください。ここは私の神聖な職場です」
と書いて、トイレの壁に貼ったのでした。
たったそれだけですが、それでピタッとなくなったそうです。
以来、井深氏はリーダーシップを“影響力”と言うようにしたそうです。会社で言えば、社長が、部長が、プロジェクトリーダーが、常にリーダーシップを持つわけではありません。「人を動かす影響力を持った人」がリーダーなのです。
そう考えると、悪い影響を与えるリーダーもたくさんいます。新しいことをするとき、変化をするとき、難しいことをするとき、必ず「エーッ!!」っと言って、顔に露骨に出る人もいれば、つらつらと否定的な言葉を並べる人も、何も言わないが行動しない人も、周りに影響を及ぼすという悪い意味で立派なリーダーなのです。
皆さんは、日本酒のできるまでの過程をご存知ですか?
①麹(こうじ)と米と水を混ぜる。
②やがて硝酸を食べる細菌が繁殖し、外の細菌が繁殖しないように亜硝酸を出す。
③やがて硝酸を食べる細菌は、自ら出した多量の亜硝酸により死滅する。
④次に乳酸菌が発生し、外の細菌が繁殖しないように乳酸を出す。
⑤やがて乳酸菌は、自ら出した多量の乳酸により死滅する。
⑥次に麹の酵母菌がアルコールを出し、酒樽の中はアルコールで満 たされる。
⑦これを人間が美味しく頂く。
⑧もしそのままほって置いたら、酢酸菌が発生し、アルコールを酢に変える。
⑨酢酸で菌が死滅し、水とCO2になる。
このそれぞれの細菌を人間に置き換え、自らのみの繁栄のために出す酸を人類の文明と置き換えたらどうなるのでしょう。
政治の世界も似てるように思いますが、会社の経営も、社内の組織も、人間社会も、自分のことだけを考える人は周りに悪影響を及ぼし、それだけでなく、最終的には自分もダメになってしまうということですね。
非常に興味深いと思いませんか?(^^)