コラム『所長の眼鏡』

全国から注文が殺到する本屋2015.02.01

 平成27年度の税制改正大綱が発表されました。 デフレ脱却・経済再生、地方創生、消費税率引上げ時期の変更に伴う対応、国際課税関連が主な内容です。 なかでも注目すべきは、成長志向に重点を置いた法人税率の引下げです。 現行34.62%の法人実効税率を、数年で20%台にまで引下げることを目指すとのことです。
法人税について日本が抱えている問題は、法人税を払わない「欠損法人」が7割を超えていることです。 世界的に見ても圧倒的に多く、この問題を解決しなければいくら税率を下げても意味がありません。 経団連が企業に積極的に「投資」をしてもらいたいという狙いで、法人税の引下げを声高に叫んでいるのですが、これは逆です。 大企業は、配当に回るお金、そこから残る内部留保が大きくなるだけで、投資に回そうとはならないのです。 高度成長期、日本企業は50%以上税金という時代に、投資を行い成長してきました。 世界でも積極的に投資をしている国の税率は高く、要は国に持っていかれるのを嫌がって投資するのです。 極端に言えば、法人税率100%となれば、「全部持っていかれるぐらいなら投資をしよう」となるはずです。 今の政府税調は、一度も経営をしたことがない学者と政治家ばかりで、大企業に言われるがままです。
いずれにしても、経済の成長がなければ今の日本は「低欲望社会」です。 パチンコに限らず、ギャンブルしてまでお金儲けしなくてもいい、邪魔くさい、麻雀もしないし、車も維持費がかかるからいらないという若者が増えているのです。 これは、頑張らなくても何とか食べていける時代になり、成長しようという意欲が失われたのが大きな要因ですが、もう一つ、彼らが10代を過ごした時期、日本はずっと低成長であり、そういう体験しか知らないのも大きな要因です。
では、どうすればいいのか? やはり、消費者が消費意欲を掻き立てるような仕組み、知恵が必要です。
先日、面白い記事を見つけました。 人口たった1万8千人という北海道砂川市の田舎町に、全国から注文が殺到する「いわた書店」という本屋さんがあります。 今年に入り、一時受付を停止していたサービスを再開すると、あっという間に650件以上もの注文があり、年内分はいっぱいで、すぐにまた受付は停止。現在は再開待ちとなっています。 無題 そのサービスとは? サービスを申し込んだ人に、最近読んだ本や職業について簡単なアンケートを取り、その答えから店主が1万円分のオススメの本を選んで送ってもらえるという「1万円選書」です。 あえてアンケートの答えと同じ系列の本は選ばず、本人は選ばないけど読めば満足してもらえそうな本を選んでいるそうです。 「こうくるか、という変化球を投げて読書の幅を広げてほしいんです」と、読書好きからは絶賛されるこのサービス、きっかけは10年前、高校同窓の先輩の前で書店業界の厳しい状況を話したときに、「それじゃあ面白そうな本を見繕って送ってくれよ」と数人の先輩から1万円札を渡されたそうです。 病院長、裁判長、社長といった面々で、緊張し、なぜこの本を薦めるのか手紙を添えて送ったそうです。 今でこそ全国から注文が殺到するが、大規模競合店の対抗策の一つで、それ自体は経営の助けにはなっていなかったそうです。 ただ、「面白い本はどれ?」というお客様からの叱咤であり、「本屋の原点に立ち返れ」という激励だと思っているそうです。 ほかの業界でも、なにか参考になりそうです。