コラム『所長の眼鏡』

“ありがとう”の反対語を知っていますか?2016.08.01

 皆さん『ありがとう』という言葉を頻繁に使いますが、反対の意味の言葉って、何かご存知ですか? 調査によると『ごめんなさい』という人が多数を占めたようですが、『ありがとう』の反対語は『当たり前』です。
「ありがとう」は漢字で書くと「有難う」(ありがたし)という意味です。 有ることが難しい、まれである。めったにない事にめぐりあう。すなわち、奇跡ということです。 奇跡の反対は、「当然」とか「当たり前」。
我々は、毎日起こる出来事を当たり前だと思って過ごしています。 歩けるのが当たり前。目が見え、耳が聞こえるのが当たり前。毎朝目覚め、息ができ、食事ができるのは当たり前だと思っています。
かつて、フィリピンの首都マニラのトンド地区に、スモーキーマウンテンという場所がありました。 ここは首都の広大なゴミ捨て場で、一日中ダンプカーでゴミが運び込まれ、ここに捨てられていきます。 積み重ねられたゴミは自然発火し、いつも煙が上がっていたので「煙の山」、スモーキーマウンテンと呼ばれていたのです。 現在は閉鎖され、住民も強制退去させられたようですが、以前ここを訪れたカメラマンの話によると、あたり一面、目も開けられないほどの煙が立ち込め、吐き気をもよおす悪臭が漂っていたそうです。 んな所に、ビンやスクラップなどのゴミを拾い、リサイクル業者に売って暮らしている子供たちがいました。 手や足は真っ黒に汚れ、皮がめくれて血だらけ、それでも子供たちは一心不乱にゴミを拾うのです。
カメラマンは、数人の子供たちが遊んでいたので話を聞いてみると、その中に一人の少女がいたそうです。 頭のてっぺんから足の先まで真っ黒に汚れ、ボロボロのシャツを着た10歳ぐらいの女の子です。
瞳がキラキラと輝き、笑顔がかわいい少女に、
「あなたの夢は何ですか?」と聞いてみると、
その少女はニコニコしながら、
「私の夢は大人になるまで生きることです」と答えたそうです。
この答えを聞いて、グッときました。 少女にとっては、我々の「当たり前」のことが「夢」なのです。


槍ヶ岳1
槍ヶ岳3

先月三連休を利用して、北アルプスにある「槍ヶ岳」に登ってきました。 標高3,180mは日本で5番目の高さですが、日本のマッターホルンと呼ばれるその姿どおり、過酷さは富士山の比ではなく、距離にして登り28㎞、下り28㎞、頂上付近はロッククライミングのように岩をつかみ、垂直のハシゴを上ったり、鎖をつかんで登ったりします。 やっとの思いで登りきった頂上は360度の大パノラマで景色は圧巻でした! ただ、達成感に浸るのも束の間、頂上といっても4畳半ほどの広さしかありませんので、一息ついたら下山です。
今回貴重な体験をしましたが、途中山小屋で2泊しました。 ここではまさに日頃「当たり前」のことが「当たり前」ではないのです。 まずお風呂です。中腹での1泊目はお湯につかることはできますが、シャンプーも石鹸も歯磨き粉も使えませんし、 山頂手前の2泊目はそもそもお風呂がありません。 男ですし、2日ぐらいはどおってことありませんが、もう一つ困ったのが、携帯の電波が入りません。 これには参りました。。。
今、日本ではあらゆることが「当たり前」になっています。 「感謝」を忘れ、「不満」ばかりが充満している世の中です。 豊かで便利になるにつれ、こういった大自然でリセットすることの必要性を実感しました。