コラム『所長の眼鏡』

ストーリーを語る2018.01.05

 2018年がスタートしました。 昨年は衆議院選挙や米トランプ大統領誕生など、政治のニュースが世間を賑わせました。 今年は政治ではそれほど大きなイベントはなく、平昌五輪とFIFAワールドカップロシア大会が開催されますし、大谷翔平選手のメジャーリーグ挑戦など、スポーツ好きの私としては明るい話題が多く今から楽しみです。

とはいっても、昨年から続く北朝鮮問題や、年末世間を賑わせた大相撲の暴行問題などは気分が悪く理解に苦しみます。 この2つを同列に扱うことはできませんが、ただ共通して言えることは、北朝鮮も相撲協会もメチャクチャです。 世界中から何を言われようが、世間から何を言われようが、偏った主張をする両者は滑稽なほど似ています。 そして安倍首相の強硬路線も、貴乃花親方の徹底抗戦も何となく似ていて、いくら噛み合わない相手であっても、やはり対話が必要でしょう。

およそ100万年前、類人猿が火を使い始め、それが人類の発達に大きな影響を与えました。 暖を取ること。天敵から身を守ること。料理。脳の発達。しかし、それだけではありません。

火は社会的なつながりの場を生み出したのです。 日没後に、人々は火の暖かさと揺れる灯に集まるようになったのです。 では、みんなで集まっている間、何をしていたのでしょうか。 それは「物語を語る」こと、つまり「ストーリーテリング」す。 ストーリーテリングとは、事実をただ提示するのではなく、物語として伝えることで、相手により強い印象を与えることができる手法です。 ビジネスでは、プレゼンテーションやブランドの世界観に引き込むときに効果を発揮します。 私は関西の人は比較的得意なのではないかなと思います。笑

人類学者のポリー・ワイズナーは、いつだれが何を言ったかを定期的に記録し、40年にわたって研究した結果、日中と夜間の集まりには劇的な違いがあったことを示しました。 日中の話は、大人数でも経済議論やゴシップが中心だったのに対し、夜になるとリラックスしたムードが漂い、歌や踊りや儀式があったが、ストーリーテリングの時間が一番長かったのです。 遠い場所から火のあるところに人々が持ち寄る話は、聞く人の心と頭に焼き付いたのです。 生きている人の話と死んだ人の話。 今の話と遠い昔の話。 笑いや緊張や驚愕を引き起こす話。 男性の語る話。 女性の語る話。

こうしたストーリーが人間の想像力や夢を見る力を伸ばし、他人の心を理解する力を伸ばすことに役立ったのではないでしょうか。 また、ストーリーを通して、人間は小さな集団の垣根をはるかに超えて、巨大なソーシャルネットワークを形成し、新たなコミュニティを作っていったのではないでしょうか。 人類の進化において、ストーリーを語る技術と聞く技術が大きな意味を持っているのです。 しかし、人類が経験したことのない現代のSNS社会と言われる世の中の変化は、ストーリーが語られない部分が多いため、人々の焦り、苛立ち、不安に拍車をかけているのかもしれません。

新年を迎え、大きな発想の転換や思い切った選択をするには、日没後に火を灯し、家族、社員、取引先とストーリーを語り合うのがいいのではないでしょうか。 重要なのは、最後に笑いや感動や驚きで締めくくることです。