コラム『所長の眼鏡』
Netflixの凄い戦略2023.11.01
今年は我が阪神タイガースが優勝し、明日からいよいよ日本シリーズです。皆さんのお手元に届く頃には何勝何敗になっているのか、、、今からソワソワしています。
さて、皆さんの家のテレビのリモコンに、Netflixのボタンはあります?
このボタン、僕はてっきりNetflixを使っている人が日本で増えてきたから、リモコンにつけられたんだと思っていました。
ところが、実際はNetflixが日本でスタートする前から、リモコンにNetflixのボタンが付いたテレビが発売されていたのです。
つまり、リモコンにNetflixのボタンが付いたのは、Netflixが意図的に仕掛けた戦略だったのです。
どういうことかというと、今でこそ、Netflixをテレビで観るのが普通になってきた感覚があるのですが、ひと昔前までは、Netflixはアプリなので、スマホやパソコンを使って観るものというイメージを持っていました。
電車に乗りながら、スマホで映画を観る、みたいな感じです。
ところが、Netflixは日本でサービスをスタートする前から、テレビのリモコンにNetflixのボタンをつけるために動いていました。
しかも、これがすごい方法で、「Netflixが1台ごとに10円、メーカーに支払う」というものです。
価格競争が激しく、コストを削減したいテレビメーカーにとってメリットのある提案ですし、テレビを観る人にとってもテレビの便利さを高めるものです。
リモコンの制作費は100円ほどみたいですが、リモコンにボタン1つ付ければ、コストの1割が返ってくるわけですから、メーカー側としては提案を断る理由がありません。
それに、Netflixが日本に参入した2015年、ネットに対応しているテレビの出荷台数は250万台ほどで、そうなると、250万台すべてを合計しても2500万円。
Netflixの年間マーケティング費用が600億円ほどなので、0.042%のコストで、テレビのリモコンにNetflixのボタンをつけることに成功したわけです。
テレビのリモコンにNetflixのボタンをつけることができれば、スマホやパソコンを使いこなす若い層ではなく、少し上の層にもアプローチできますし、さらに、有料動画配信サービスで視聴するユーザーが50%を超えるぐらいに増加しているそうですが、テレビで観る人が増えれば増えるほど、他の動画配信サービスに差をつけられる大きな要因になります。
テレビのリモコンにボタンがあるぐらいですから、信頼しますしね。考えれば考えるほど、凄さが伝わってくる話です。
これを考えて、実行した人は天才ですね。
Netflixが日本のテレビに対してかけたコストは年間2500万円。
一見、高いように思いますが、これは、個人で一軒家を買うよりも安い金額でしょう。
そんな個人でも出せるようなコストしかかけずに、これだけのことができてしまうのは、やっぱり素晴らしいアイデアだったからです。
こういう素晴らしいアイデアの話を聞くと、刺激を受けますよね。広告でも、アイデアの良し悪しで売上に10倍、20倍の差が生まれるなんてことはザラにあるようですし、世界有数の企業であるNetflixとは勝負できませんが、お金ではなく、アイデアで勝負するのは、これからの時代、ますます重要になってくると思います。