コラム『所長の眼鏡』
マーケティングと巨大な石臼2012.03.01
最近消費税の増税論議がクローズアップされ、私も会う人会う人からよく質問を受けます。
しかし、今の政治状況で答えられるはずもなく、歯がゆい思いがします。
「何も決められない政治」と言われていますが、税金は国にとっては売上げですから、これを先送りするのは理解に苦しみます。
同じように、国にとっての人件費の削減ができないのはもっと異常で、ギリシャと同じですね。
さて、不満や不安、そして政治批判のオンパレードで混沌とした世の中ですが、やはり商売は着実に歩を進めなければなりません。
企業が倒産する原因をたった一つ挙げるとすれば、それは「販売不振」です。
中小企業庁や帝国データバンクのデータで実証されていますが、毎年毎年、「販売不振」が倒産原因のトップで、商品が売れずに多くの企業が倒産していきます。
今や中小零細企業、商店までがマーケティングを考えなければならない時代になりました。
横文字にするとすぐ敬遠されますし、「そんなん関係ないわ!」という声が聞こえてきそうですが、マーケティングとは、「お客様が求める商品やサービスを作って、その情報を届けて、その商品を効果的に買ってもらうようにする活動」のすべてを指すのです。
したがって、企画、開発、設計、ブランディング、市場調査、価格設定、広告、宣伝、流通、店舗の設計、営業、集客、接客、顧客管理などで、すでにすべての企業が何らかの形で行っているのですが、そのやり方に問題があるか、もしくはいまだ成果が上がっていないかのどちらかなのです。
例えば、大きな石臼を回すのに、人は何度も何度も、いろんな方法で石臼を押します。押したり、また反対側に押したり。
すると、ある瞬間に…石臼がちょっと動きます…。
その少し動いた瞬間にも押し続けることで、石臼が少しずつ動き出します。
そしてそのまま押し続けると、だんだん動き出します。
さらに押し続けると、石臼の回る速さは早くなります。
そして…アレ!?
あるところから、そんなに強く押さなくても石臼は動き続けるようになるのです。
さて、ここで問題です。
どの「一押し」が決定的な影響をもたらしたのでしょうか?
①初の1回目
②2回目
③ピクリと動いたとき
④動き出したとき
⑤スピードが上がったとき
すでに皆さんは、この質問が愚問だと気づいていると思いますが、答えは当然、すべて必要となります。
ビジネスも同じで、大きな成果を出すためのマーケティング活動で、決定的な一押しが何かは分かりません。
すべて必要なのです。
それよりも大事なのは、毎日のあらゆる活動(一押し)です。
毎日、毎日、やり続けないと成果は一瞬にして止まってしまうのです。
「商品に恋をするな、顧客に恋をせよ」という言葉があります。
人間は悲しい生き物で、どうしてもつい自分のことを考えてしまいます。
無意識に…。
脳科学によると、人間は意識のある時間のうち、97%は自分のことしか考えていないそうです。
道行く人に「今何を考えていましたか?」と聞けば、ほぼ全員が自分に関係することを答えるそうです。
すなわち、ビジネスにおいても、何を作ろうか、何を売ろうかではなく、お客様が何を欲しがっているか、何を買おうとしているかを常に考えなければならないのです。