コラム『所長の眼鏡』
USP(独自の売り)を創る2012.05.01
先日何気なくテレビを観ていたら、吉本の芸人が飲食店を取材するロケで、
あるお店に「邪魔すんで~」と入ったら、
「邪魔すんねんやったら帰って~」と返ってきた。
久しぶりに聞くフレーズだなぁと思って少し笑ってしまいました。
ところがこの会話、大阪ではその後「ほなさいなら、なんでやねん!」となります。
今ではこういう会話のキャッチボールが少なくなり、大阪の下町育ちの私としては寂しい限りですが、昔の人の会話はパンチが効いてユーモアがありますね。
さて、企業が商品やサービスをアピールするときに、独自の売りをキャッチコピーにします。
これをUSP(独自の売り)といいます。
吉野家の「旨い、安い、早い」、
ドミノ・ピザの「30分以内にお届けします。もし30分以上かかったら、料金は頂きません」はあまりにも有名です。
今はどちらも使われていませんが、ドミノ・ピザは交通事故が多発したことと、真似をする業者が増え、USPとして有効ではなくなったからだそうです。
それでも昨年、「月面出店計画」を大々的に発表したりと話題に事欠かない企業です。ちなみに、デラックスMサイズの値段が日本では通常2,000円のところ、月面価格では218,540,434円だそうです(笑)
他にもセブンイレブンは朝の7時から夜の11時まで営業しているというのがスタートですが、当時の日本では「悪の十字架(開くの10時か?)」と言われるほど、小売店は10時に開くものでした。
このようにUSPとは、自社を競合他社から際立たせるユニークで魅力的なアイデアで、価格、サービス、品質、専門性など、どの分野にも必要なことです。
しかし、実際にUSPを創るのは容易ではありません。
モノや情報があふれる今の時代ではなおさらです。
「どこよりも安い」と謳ったところで、本当かどうかも怪しいですし、競合の価格を常にチェックしなければなりません。
USPを創るコツは、
①「良いところ」ではなく「違うところ」
②共感を得る言葉
③信じられる正直な言葉
の3つが重要です。
とくに「良いところ」ではなく「違うところ」というのは重要で、「良い商品=売れる商品」ではないからです。
例えば、今どきのテレビはどれを買ってきても映りはほとんど同じです。
良い商品であることは、もはや売れる理由にはならないのです。
では、なぜUSPが重要なのでしょうか。
それは、人は1番や1位、唯一のものについてはよく覚えているからです。
例えば「世界で一番高い山は?」「日本で一番高い山は?」とどちらを聞かれても即答できます。
しかし「二番目に高い山は?」と聞かれると「あれ?」となります。
このように、企業も何か「1番、1位、唯一」、すなわち「オンリーワン」と呼べるものがない限り、その他大勢の中の一つとして忘れられてしまうのです。
三越の前身、三井越後屋は三井高利が小さな借り店舗でスタートしました。
その時、江戸市民の目を奪ったのが、看板や店内の柱に大きく書かれた「現金掛値無し」だったのです。
教科書にも出てくる有名な言葉ですが、当時は訪問販売、代金は後日の掛けが普通でしたので、非常に評価され、大きな需要を掘り起こしたそうです。
これは十返舎一九や滝沢馬琴、平賀源内たち超一流のコピーライターが腕を振るったとのこと。
USPは江戸時代から存在したのです。皆さんも真剣に考えてみませんか?